「期待」(anticipation)の大切さ 最終回

【今日のテーマ】 

     ●  「期待」(anticipation)の大切さ 最終回 ●

          ~似て非なる「予想」と「期待」~
 

 このところ何回かのシリーズで、「期待」(anticipation)の大切さについ
 てお話ししておりますが、今回でとりあえず最終回にします。

 そして、来年から次なる大物(…?)の話に移っていきます。
 
 それは何かというと…、最後にちょこっと予告編だけ書きます… (^_^;)



 さて、「期待」についていろんなご質問をいただきましたが、次の質問は
 とても重要ですので、ご紹介しておきます。

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  「期待ということで説明しておられますが、日本語の場合も先を予測
   しながら聞いているという点では同じではないでしょうか?」 

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 はい…これはなかなか良い質問ですね。

 私の考えでは、英語と日本語とでは、ちょっと違うと思います。
 
 日本語の場合も先を「期待」しながら読んだり聞いたりしているように見え
 ますが、英語の場合とは「本質的に違う」んです。

 日本語の場合は「期待」ではなく、あえていうなら「予想」(prediction)
 と呼ぶ方が良いと思います。

 そのわけをご説明しましょう。



 何回か前の「うんちく」で、日本語の場合、先がある程度予想できるという
 話をしました。

 その時の例をもう一度ご紹介します。あるレコード雑誌に載っていた笑える
 話です。

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 A「やはりこちらの演奏の方が、あれに比べると断然…」

 B「…いいですね」

 A「でしょう!感覚が新しいし、テクニックも、やっぱり段違いに…」

 B「…ありますねー」

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 このAという評論家は、非常に控えめというか、いつも相手の同意を求めな
 がら話すような気弱なところがあるので、こんな話し方になります。

 それに対して、評論家Bさんは、うまい具合に助け船を出しています。

 これは英語ではありえないことです。日本語だからできることなんです。

 つまり日本語は述語動詞が最後に来る関係上、話の流れからどういった結論
 (述語動詞)を導きたいかが、おのずから相手に予想できるようになってい
 るんです。

 ところが英語では、結論である述語動詞Vが、主語に続いて冒頭に来ます。

 そして、続くフレーズで付帯状況を説明していくわけですが、そもそも付帯
 状況というものは時と場合によって大幅に違ってくるので、そう簡単には
 予想できないんです。


 …具体例を出しましょう。

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She continued to train hard in hopes of making it to the podium.

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 この文章をS+Vで切ると、上記の2つの文章に分かれます。

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She continued …
彼女はし続けました、

    to train hard in hopes of making it to the podium.
      厳しいトレーニングを、表彰台に上ることを願って。

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 さて、文章の前半で、She continued と言う言葉を耳にした聞き手は、この
 先どういった付帯状況が来るのか「予想」(prediction)できるでしょうか?

 「彼女は続けました…」とありますが、一体何をし続けたのか、具体的にどん
 な言葉が来るのか、誰にもわからないはずです。

 たとえば、この文章の後半は、「理解してもらうために説明を(し続けまし
 た)」となるかもしれませんし、あるいは「成功するために勉強を(し続けま
 した)」となるかもしれません。

 それは話し手以外の誰にもわからないことです。

 ただし、「何かをし続けた」ということは予測できます。

 ですから「それは一体何だろう?」と、聞き耳を立てて待つわけです。

 一体この文章は、この先どんなドラマが起こるんだろう、とワクワクしながら
 「期待して待つ」ということなんですね。

 これが、このところのテーマである「期待」(anticipation)ですね。
 
 そしてこの英文の場合、She continued に続いて、to train hard in hopes
  of making it to the podium. という言葉が来ました。

 すると私たちの期待は「表彰台に上ることを願って、厳しいトレーニングを」
 という情報を得ることで、完全に充足されるんですね。


 
 これに対して、日本語ではどうなるでしょう。「返り読み」で普通の日本語
 にしてみましょう。

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  彼女は表彰台に上ることを願って、厳しいトレーニングを…

                        し続けました。

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 ここで、あなたは文章の前半である、

「彼女は、表彰台に上ることを願って、厳しいトレーニングを…」までを耳に
 したとします。

 その段階で、次の展開が何となくわかると思いませんか。

 「…し続けた。」ということが、かなりの確率で判ると思うんです。
 
 もちろんこのケースで「し続けませんでした」となる場合もあるでしょうが、
 これは肯定か否定かの違いであり、論旨の中心である述語動詞「continued」
 に変化はないんです。

 さらにこのケースでは、「し続けた」でなく、「(トレーニングを)重ねた」
 という場合もあるかもしれません。

 でも、その場合でも、「重ねた」と「し続けた」では、類似の内容の言い換え
 に過ぎず、本質から大きくそれるというようなことではないのです。

 間違っても、「…食べた」とか「…考えた」などという、とんでもない展開は
 予想できません。

 つまり、日本語の場合、英語のように先が全然読めないという状況は少なく、
 たいていの場合、ある程度、先が予想できます。

 いかがでしょう? …これが日本語なんです。

 日本語では、文章の展開がある程度、「予想できてしまう」ので、その先を
 漠然と「予想」(prediction)しながら聞いているんです。
 


 では、ここまでの説明をまとめてみましょう。

 英語も日本語も「先を予測しながら聞いている」ように見えます。

 しかし、厳密に言うと、英語の場合のそれは「期待」(anticipation)であり、
 日本語の場合は単なる「予想」(prediction)だ、ということなんです。


   英語の場合の予測  ⇒ 「期待」(anticipation)

   日本語の場合の予測 ⇒ 「予想」(prediction)


 ここで質問です。両者の決定的な違いは何でしょうか?

    (…ここからが本番です (^_^;)

 はい、答えは…「期待」には緊張感が伴い、「予想」には緊張感が伴わない、
 ということなんです。

 英語の場合は、先が簡単に予想できないので、「この先どうなるのかなー」
 と、ワクワクしながら待つことになります。

 …ここには「緊張感」があります。

 先行きに対する「積極的な姿勢」と言いますか、食らいついていく姿勢が
 要求されます。

 しかし日本語の場合、先が何となく予想できるので「積極的な姿勢」は
 いらないんです。緊張感なく、のんびりとフレーズを追っていれば良い。

 ここで、問題です。 …緊張感を持って先を「期待」することを訓練して
 いない日本人が、英語を聞いたらどうなるでしょうか?

 「英語って先が読めない」「頭が混乱する」「難しい」ということになる
 んです。これが、日本人にとっての英語の難しさの理由なんですね。

 ですから今日の結論も、解決のカギを握るのは「期待」(anticipation)だ
 ということなんですね。 (^_^;)

 結局、SIM方式で「期待」の訓練をすることこそ、英語上達の秘訣になっ
 てくるんです。



 …さて、ここまでにしましょう。 (^o^)

 今年はこれでダン上野Jr.の講義はおしまいです。

 皆さん、ややこしい話によくついてきてくださいました。

 来年は、「期待」とはまた別の大物である「保留」(retention)のお話しに 
 入っていきます。

 …保留も非常に大切ですよ。
 
 いくら「期待」しても、「保留」がないなら話が進まないんです。 (^_^;)



      …この続きはまた来年。

        今回のお話しをよく「保留」しておいて、
    
             続きを「期待」してください! \(^o^)/
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by danueno | 2006-02-02 15:37 | SIMうんちく


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